2014年11月20日木曜日

#DTM作曲をなめるな 一連の流れについて④ 〜低きへの流れは止まらない(後編)〜

前回の「人に迷惑をかける低レベルの作家」急増の原因

②同人音楽・特にボーカロイド曲の作曲者がメジャー系レーベルからリリースする道筋がある程度スタンダード化した。


との因果関係をお話したいと思います。

まず、誤解をしないでほしいですが、私は
「同人音楽の発達・拡大、ボーカロイド音楽の隆盛に対しては、大いなる希望と期待をしている」
と大応援している一人だということです。

それこそ自然発生的に草の根から育ち、商業エンターテイメントの悪影響を(それほど)受けずに独自の発展と発達を遂げてきた同人音楽フィールドは「音楽の最も健全なあり方」であろうと思います。私自身もサークル参加に携わる一人として、身近にそのエネルギーと情熱を肌で感じ取っています。
おそらく、これからも多くの新陳代謝を繰り返しながらもますます規模が大きくなり、音楽提供形態の主要な形の一つとして定着するに至るのだろうとおもっています。

その流れの中でボーカロイドの登場はそれまでの音楽制作のあり方に一石を投じるものとなりました。初音ミクが誕生してからの流れはもうここで書くまでもないと思います。特に、ニコ動との連携、メディアミックスへの発展はこれまでの音楽ビジネスモデルにない全く新しい風を起こしたと思います。

実はボーカロイドの発売当時(ミクではなくMeiko等)は今の主流となっているメインボーカルを担当させることが目的ではなく、それこそ仮歌目的や、バックコーラスへの流用目的でした。
当然使用対象者も普段は生身のボーカリスト用の楽曲制作者でした。

正直初代はあまり売れず、言葉通り「仮の仮歌用途」に用いられるのがせいぜいだったものです。
そして、衝撃的なミクの登場でそういったサブ的からメインボーカル用へと一気にボカロ用途が変化し、あとは現在への流れへと一気に突き進んでいくこととなりました。

ここで、これまで絶対になかった新しいクリエーター環境が出現します。


「リアルに歌手と仕事をすることなく歌モノ楽曲を作り上げることが可能となった。」



初代発売の2003年当時はADSLが普及し始めてDTMもやっとPC内完結型が登場した頃で、歌モノのデモを作るにあたり仮歌を入れるというのはプライベートスタジオに依頼ボーカリストを呼んでRecというのがまだまだ一般的でした。
この「リアルな歌入れ」というは作曲家を目指す人間にとってはいろいろな難関が待ち構えていました。

・そのための自宅スタジオの環境構築というのがものすごくハードルが高く、またいまよりも機材全般が高く費用もかなりかさんだ。
・レコーディングセッティング等にある程度のエンジニア技術と知識が要求される。

これらはまだ序の口で、問題はここからでした。

「女性であることが多いボーカリストに家に来てもらわなければならない。」

ここをクリアするために
・十分に社交性があり、かつ信用と信頼のおける人物でさらに将来性がなければならない。
・ボーカリストというDTMで扱う通常の楽器パートとは全く違う特性を十分に理解しなければならない。(ピッチ幅、フォルマント、ボイスチェンジングPoint、子音特性、語句とリズムの相関、ビブラート質、アーティキュレーションの的確な指示・・・)

そして、最大の難関が

「十分に歌心のあるボーカリストの特性をよく把握したメロディで、かつ十二分な楽曲クオリティでないと良いボーカリストに歌ってもらえない。

というものでした。
当時はこういった高いハードルを乗り越えた作曲家のみがコンペという土俵で戦えて報酬を得られました。

そこに、ボーカロイドという上記のハードルを全く必要としない素晴らしいアイテムが誕生しました。
結構、クリエーターの仲間内ではみんなが興味津々で試した人もかなりいたのです。しかし、結局生身のボーカル以上の効果はなく、
すでに十分にボーカリストとの信頼関係を築けている作家にとってはまったく利用価値の無いものでした。

また、採用デモの話をきいてもボカロ使用でのコンペ通過と言うのは私の周りでは聞いた覚えがありません。
(情報ではハ◯プ◯内部のデモ段階ではよく使われていたと聞いています。)


そんな、初代ボーカロイドの話題が風化してた頃の2007年にミクが登場しました。


初代とは全く違うメインボーカル用途、完全なキャラクター設定のコンセプトは「なかなかに面白いものにボーカロイドも変化したな」と十分に思わせるものでした。でも、ここまでの隆盛を予見できたクリエーターは正直当時はいなかったと思います。

ここまでの説明でもうおわかりの方もいらっしゃると思いますが、ボーカロイドの出現によって逆の見方をすれば

・環境構築が容易。
・DTM技術だけでエンジニアスキルはまずいらない。
・対人関係が苦手でも良い。
・専門のボーカル知識がいらない。
・歌心がないメロディでも、楽曲クオリティが十分でなくても良い。

状態でも「ボーカロイドで歌モノ楽曲を完成させることができるようになった。」ということなんです。

ここで、誤解しないで欲しいのは「ボカロP・ボカロ曲全体がそうだとは決して言っていない。」ということです。
動画ランキング等に入る楽曲には十分に歌心のあるメロディ、クオリティの素晴らしく高いものが多々あります。私が心奪われたり、感嘆したり、素直に好きな楽曲もあります。
「あ、これ完全にプロの人内緒でやってるでしょ。」という作品だって結構(いや、すごく)あります。(聞けばわかります)

正直、「メジャーレーベルからリリースされた作品を書いているからプロ。インディーズ、同人はそうでない。」という区分は、いま全く意味のない考え方だと思います。「じゃあプロの作曲家の定義ってなんだ!?」と思う方もいるでしょう。この話はまた違う機会にします。(すごく重要な事です)
それくらいに、ボカロというのは玉石混交の活況あるフィールドで、これからの発展発達がどうなるかはとても興味が有るところです。(頭打ちという声も聞かれてはきてますが・・・

すこし、話がそれ気味になったのでもう一度戻します。
ずばり、ボカロフィールドには上記の逆の見方をした権化のような「歌モノの体裁を成していない残念な楽曲」が多いのもまた事実です。(ボーカロイドだから歌モノ範疇じゃなくて良いんだよ!と思われる方がいるかもしれませんが、もっとそれ以前の音楽的標準基準においてです。)

Twitterでもなんどかつぶやきましたが
・完全に自分の趣味範囲の楽曲
・動画投稿や同人即売会などでの無料配布

するぶんには全く問題がないと思います。
ですが、ボカロが活況あるフィールドということはそれだけイレギュラーなことが生まれる可能性もあったのでしょう。



「リアルに歌手と仕事をすることなく歌モノ楽曲を作り上げる作曲家がメジャー商業ベースで出現した。」




このタイプの「作曲家」が出現しても私はいいと思います。あえて歌手というものを知らないがゆえの個性ある楽曲もあっていいと思います。ただ、そうした場合商業レーベルブレーンの人間がその作曲者に、ボーカリストという極めて過酷で大変な職を務め上げている人間に対しての情報と敬意というものを持たせる教育を絶対にしなければなりません。作曲者とボーカリストと言うのは互いに尊敬しあう存在でなければ良いパフォーマンスが絶対に生まれません。そのためにボーカリストの特性と言うのは作曲家にとって絶対に理解しなければならない要素です。

自分のできないことをしてくれる人間には敬意を払うのが当然と考えます。
でもそこに敬意を払わない人間が「商業レーベルブレーンの人間」にいるんです。作曲家のほうではありません。
本当は作曲家自身がその敬意を自然発生的に持つ人間性を備えるべきなのはもっともなのですが、更なる責任はそれを商業フィールドに引き上げた周りの人間にあります。これは今回の核心を突いてくる非常にデリケートで複雑なお話なのでまた追って違う機会にお話します。(できるといいのですが・・・


②同人音楽・特にボーカロイド曲の作曲者がメジャー系レーベルからリリースする道筋がある程度スタンダード化した。


ここにそれを目指すという新しい機会と共にボーカリストを蔑ろにするという傾向が醸成されてしまった。
→一般作曲者・DTMユーザーの「歌モノ楽曲を作る」基準の平均認識レベルが下げられた。
これは言い過ぎではない事実です。(「歌い手」の問題というのもあるのでしょう・・・

そして、同人音楽の多く作曲者、さらには商業作曲家を目指すという高いハードルを設定してる人でもその影響が蔓延しているのだと思われます。

ボカロPと名乗り、そう呼ばれる方々と生まれた楽曲群が、その世界だけで生き続けることが完結してるならば問題はないんです。
しかし、そのフィールドから商業ベースへの道筋がうまれ、一般的な楽曲制作を目指す土壌というものもうまれてしまっている。

それが、「生身のボーカリストが歌う体裁に全くなってなく、楽曲クオリティもかなり低いお粗末なデモ楽曲」を必然的に増やしてしまっている一つの要因です。


前編・後編と主に大きな要因についてお話しましたが、ここにからんだ実に様々な要素がまだまだあります。
その中にもっと根本的な要因として

・DTMをはじめとした音楽制作環境の劇的な進化と変化

があります。これの功罪はものすごく大きいです。
次回はそこを突っ込んでいこうと思います。
また、そろそろ「じゃあどうしたら良いの?」「いいとか悪いとか言ってるけどその基準って何よ!?」という疑問への回答やサジェスションもしていこうと思います。(音楽には基準がちゃんと絶対値スケールであるんですよ